外壁塗装と塗料について弊社の考え方・注意点を分かりやすく書き綴っています。外壁塗り替えの際、役に立てれば幸いです。
この塗装って何年もつの?
『この塗装って何年もつの?』
そう聞かれる事があります。この塗料の【もつ】【もたない】の定義は人によって分かれるかと思います。
外壁に割れがくるまでのもつ、もたない。
汚れが付着するまでのもつ、もたない。
そうお考えになる方がいるかもしれません。
私自身のもつ、もたないの判断基準は、塗膜が活きているかどうか、ということになります。ですので、単純にチョーキングが何年で起きるか?と言い換える事ができます。
チョーキングとは外壁をさわった時、白く手に付く現象をいいます。
※長年紫外線、風雨を浴びることによりこの現象がおきます。
よく見聞きする『シリコン塗装なら10年もつ』という言葉は逆に言えば10年を目処にチョーキングが始まりだすということになります。あくまで目安の話です。
どんな塗料であれ塗装をして時間が経てばチョーキング現象が起こりますので、チョーキングがおきたとしてもすぐに塗装工事をしなければいけないか?と言えばそうではありません。あくまでそろそろ塗り替えを検討しだすサインくらいで捉えてください。
このチョーキングですが、紫外線、風雨の影響でこの現象が起きることから、日当たりのいい南面などは北面にくらべ早い時期に現れます。
あとは建物の形状も関係があります。
軒天ありのお家 | 軒天なしのお家 |
ご覧のように軒天と言われるような、屋根がせり出している建物は紫外線・風雨の影響をもろにうけませんので、屋根が無いタイプの建物に比べると塗膜は傷みにくいと言えます。
つまりですが、塗料の【もつ】【もたない】は建物の形状、立地、環境によって大きく変わってくるということです。
チョーキングだけではありません。カビ・藻の発生、外壁の割れも同じことが言えます。
外壁割れ(クラック) | カビ・藻の発生 |
例えばですが、ダンプカーがお家の前を毎日走るような立地であれば、振動で外壁の割れは早々に起こりやすいでしょうし、山手の地盤がしっかりしたお家であれば外壁の割れは起きにくいと言えます。
カビ・藻の発生も同様です。日当たりが悪い、緑が周辺に多いとなれば繁殖しやすくなります。
すべてにおいて好条件のお家、建物ばかりではないのはごく当たり前のことです。それでも塗装業者である私どもは塗料の性能を120%引き出せるよう思案しご提案、実際に施工する事が重要と考えます。
外壁の割れは、早急に対処したほうがいい場合ともう少し様子を見ていい場合と2種類あります。割れている場所によっては建物内部の二次被害(木材の腐食・モルタルの脆弱化)の可能性もありますので気になりましたら専門の業者さんにお問い合わせください。 |
外壁の塗替えには弾性塗料を使った方がいいのか?
「割れがひどいので弾性の塗料で塗って欲しい」
お客様からそうご要望されることがあります。
外壁が割れているから、伸び縮みのする弾性塗料を塗って欲しいとの事なのですが、一口に弾性と言っても数多くの種類があります。その全てを一括りにするのは少々乱暴な気もしますが、弾性塗料を使用する際に気をつけるポイントだけ書いておきます。
私が塗装屋の見習いを始めた頃、単層弾性(たんそうだんせい)と呼ばれる弾性型の塗料で塗り替えることが主流だったような記憶があります。
今でも販売はされていますが、現在は使われる事が少なくなりました。使われなくなった理由は3点あると思います。
1、耐候性がよくないこと
2,サイディング外壁のお家が多くなり、不向きなこと。
3,透湿性が悪いこと。
特に透湿性が悪いと弾性という性質上、内部からの湿気で膨れを誘発しやすくなります。
透湿性とは・・外部からの水は通さないですが、内部からの湿気は通す機能になります。 |
透湿性については、雨の時に着るカッパ(レインウェア)をイメージされたら分かりやすいかもしれません。少し価格の高いカッパを着ると、雨水のような液体は通しませんが、汗をかいた時にでる湿気は放出します。ですので長時間着ていても快適にすごす事ができます。
外壁の塗装もこれと同じことが言えます。内部の湿気は通して雨水はシャットアウトする。これが理想です。
実際には、透湿性の機能がついた塗料と言っても限界があり全ての湿気を通すかと言えばそうではありませんが、なるべくなら透湿機能のある塗料を選択されたほうがいいかと思います。
あともう一点、弾性塗料を使用する際の注意点としては窯業系サイディング以外にも塗れない下地がありますので注意が必要です。
1例ですが以前に書いた記事です。ご覧ください。
水性塗料、溶剤塗料、どちらを使ったほうがいいか?
塗料には大きく分けて2種類あります。水性と溶剤です。水性塗料は水で薄めることができる塗料、溶剤型塗料はシンナーで薄める塗料です。
シンナー臭がするのは溶剤型塗料になります。
【水性塗料の一例】
水性ケンエース |
水性ハイポンプライマー |
軒裏塗装で多用する |
水性のサビ止めです。 |
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【溶剤型塗料 の一例】
1液ファインウレタンU100 |
ファインウレタンU100 |
各メーカーからでている |
1液ファインウレタンが |
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一般の人から『水性だったら雨が降ってももつの?』と言われたことがありますが私自身、見習いの頃思っていました(笑)
そういえばその頃(20年前)ベテランの職人さんでもよく『水性は信用でけへん』なんて言いつつラッカー系のアクリルを多用している方もいました。
一般論ですが、今でも同じメーカーで同じ種類の水性塗料と溶剤塗料とを比べた場合、耐候性は溶剤塗料の方が上だと言われています。
耐候性・・・たいこうせい。塗膜の強さ。色あせやチョーキングが起きにくい塗料に対して『耐候性がいい』という使い方をします。 |
ただ、今の時代は水性塗料の商品も確立していますから「水性は極端に弱い…」ということはありません。ほぼ互角です。外カベの塗り替えに際して、臭い、ご近所の影響などが気になる場合は水性塗料にされた方がいいのではないでしょうか。
以下は同じメーカーで同じ種類の水性塗料と溶剤塗料になります。
【同じシリコン塗料で同じグレードの水性と溶剤】
水性 | 溶剤 |
水性シリコンセラUV | 1液ファインシリコンセラUV |
水性タイプのシリコン樹脂 になります。 モルタル・サイディングの |
1液タイプの弱溶剤シリコン 樹脂塗料になります。 モルタル・サイディング |
外壁塗装に限って言えば、水性塗料である水性シリコンセラUVの方が施工件数が多いように思います。(弊社ではなく世間一般的に)それでも問題は聞いたことがありませんので外壁に水性塗料を使ったとしても何ら問題はありません。
水性、溶剤。どちらの塗料を選択するかについては
・現在の下地の状況。
・周辺の環境。
・お客様のご希望。
などでご提案しています。
余談になりますが建築塗装の世界では鉄部(手すり・ひさし)の場合はまだまだ溶剤(シンナー)が主流ですが、驚くことに自動車等の工業用は水性塗料への切り替えがすすんでいるとの事です。
塗料には数多くの種類があり塗装(塗膜)の性能は樹脂によってかわってきます。いい塗料、機能性のある塗料はその分塗料代が高くなります。塗料により工事費が変わるのもこのためです。
それでは上塗りの耐久年数をみていきましょう。
上塗り塗料の耐久年数と設計単価
【 】は耐久年数になります。 ※あくまで目安です。
一番下には設計単価を記載します。
設計価格とは・・・設計価格とは塗料メーカーが公表している上代価格です。電化製品でいうメーカー希望小売価格ですので、高く設定されており通常この価格の70%くらいが世間一般の㎡単価と言われています。
下塗り(パーフェクトフィラーなみがた模様 1回塗り) の設計価格になります。 |
アクリル樹脂塗料 【3年~5年】 |
タイルラック水性トップつや一番 (日本ペイント) 安価で幅広く使われていますが、外部用としては長期耐久性に不安があります。マンションの階段室など紫外線が当たらない場所であれば使うのに問題ありません。 |
設計価格 1㎡あたり2,690円 |
ウレタン樹脂塗料 【5年~8年】 |
オーデフレッシュU100Ⅱ (日本ペイント) アクリルより耐久性が高い塗料です。戸建て住宅、マンション、工場など2005年前後はこの塗料がよく使われていました。 |
設計価格 1㎡あたり2,950円 |
シリコン樹脂塗料 【7年~10年】 |
オーデフレッシュSi100Ⅱ (日本ペイント) 耐候性に優れ、ウレタン樹脂塗料よりも更に高い耐久性があります。ウレタン樹脂とそう金額に差がないことから主流の塗料となりました。2016年現在でもよく使われる塗料になります。 |
設計価格 1㎡あたり3,260円 |
フッ素樹脂塗料 【10年~15年】 |
オーデフレッシュF100Ⅱ (日本ペイント) 高耐久性が期待できる高級な塗料です。 シリコン樹脂と比べても塗料の価格が数倍する塗料になります。 |
設計価格 1㎡あたり3,740円 |
今は何が塗られていますか?
塗り替えをする場合、新たに塗る塗料は旧塗膜の種類により『何を塗るか?』が変わってきます。この壁にはこの材料は塗れません。という事もありますので、今現在施されている、お家の壁の種類を知っていると便利です。
吹付けタイル (写真は吹きっ放し) 主に・モルタル・無塗装サイディング・ALCなどに塗られています。 塗料例 |
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リシン 主に・モルタル・無塗装サイディング・ALCなどに塗られています。 硬質と弾性があります。おもに合成樹脂エマルションに骨材を入れ吹付けます。経済的で学校の壁やマンションの軒裏(ベランダの天井)によく施しています。新築、増築は別として、塗り替えで使用する事はほぼありません。 塗料例 |
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スタッコ (写真はヘッドカット処理) 主に・モルタル・無塗装サイディング板などに塗られています。 塗料品例 |
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単層弾性 主に・モルタルなどに塗られています。 ※微弾性フィーラーにて模様をつける場合もあります。 塗料品例 |
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掻き落とし (かきおとし) 主に・モルタルなどに塗られています。 左官工事の工法の一つです。古いお家につかわれている事が多いです。知り合いの工務店で新築時に、この掻き落とし採用していますが洋風のお家にも意外と合いカッコイイです。(写真の掻き落としは築年数たっています) |
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陶磁器調 仕上塗材 主に・モルタルなどに塗られています。 俗称でセラミックとも呼ばれ自然石を粉砕した骨材を使用して意匠性を高めてます。一時期かなり流行りました。複数メーカーからでてますが山本窯業化工が有名です。硬質と微弾性があり、またトップコートにクリヤーがいるタイプとノンクリヤータイプがあります。 塗料品例 |
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石調装飾仕上げ 主に・モルタルなどに塗られています。 戸建て住宅の一部(正面のみ)やマンションの1F廻りに施工されてる場合が多いです。アクセントになり高級感がでます。 塗料品例 |
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上塗りよりも重要な下地調整 とは?
かなり重要です。下地調整
今まで上塗りの種類についてお話しましたが、もっと重要な下地調整についてお話します。
外壁塗装後に発生するトラブルの原因は80%以上が 下地調整の不良が原因といわれています。 浮いた・剥がれた・ の原因にもよくなります。
上の写真はいずれも施工的な不具合によりおきた現象です。
下地調整って?
・清掃ならびに高圧洗浄(付着物除去)
・専用シーラーの塗布 (上塗り材との密着向上)
【サイディング面での高圧洗浄・チョーキングをおこした外壁面は洗うと、ここまで落ちます】
大手メーカーが販売している上塗り材であれば安価な物であっても下地調整をしっかりして、メーカー推奨の仕様であれば早々に問題が生じる事はありません。
「下地調整」は、塗装工程の中では最も重要な工程なのです。
上の写真は『シーラー』と言って、既存の壁と新たに塗る塗料とを密着をよくするためのものです。
倉庫にあるものだけを寄せ集めて写しました。実際にはメーカーごとに販売しているので もっとたくさんあります。
ほとんどが透明のものでして上塗り(白・クリーム・ベージュ等々)を塗る前に必ず塗るわけですね。 種類が違うのは新たに塗る塗料(上塗り塗料)や下地によって使い分けるわけるためです。
これを間違えたり、省くと完成した後でも浮きや剥離などの原因にもなります。
充分な知識と経験をもった専門業者をお勧めします。
嫌な思いをしないために
以前伺ったお家で、壁面積の半分以上にわたり 塗料が密着していない事がありました。
明らかに『下地調整』の手抜きとみられ浮いている塗膜を完全に剥がして補修していくのですが剥がす作業+塗装作業となり通常の塗装作業のみの場合より日数がかかってしまいます。
塗り替えの際は後々の事も考えて【上塗り材】にばかり重要視せず 『下地調整』を意識されたらいいと思います。
そして施工後に後悔しないためにも 充分な知識と経験をもった専門業者をお勧めします。
外壁塗装と塗料について まとめ
いかがでしたでしょうか。外壁塗装の基本となることばかりですがよ要点のみ、まとめますと以下になります。
・建物の形状、立地により塗膜のもちはかわってくる。
・弾性塗料を使うときには注意点がある。
・水性塗料、溶剤塗料のどちらを使うかはケースバイケース。
水性でも特に問題なし。
・塗料の樹脂により性能が違う。
・外壁の塗膜には種類がある。
・塗装工程の中で最も重要なのが下地調整。
・知識をもった専門業者に依頼する。
他のページではより深く詳細を書いていますので、お時間がありましたら御覧ください。