築年数が経過すると、どんな家にも老朽化による雨漏りのリスクは生じてきます。

 

しかし、一定の年月がたてば全ての家が雨漏りし始めるのか?というと、けっしてそうではありません。同じ頃に新築した家でも、こちらの家は大丈夫なのに向こうの家では雨漏りに悩まされている…そのような事例は数多くありますね。

不思議に思われるかもしれませんが、住宅の雨漏り発生率というのは個々の差が非常に大きいのです。

 

その「差」が生まれる理由としては、さまざまな要因があります。複数の条件が複雑に絡み合っている場合も少なくありません。
まず挙げられるのは、突風や強風を受けやすい立地、台風や大雪などの被害にたびたび見舞われる気候、メンテナンスや点検の不足、などでしょうか。老朽化を促進する環境にさらされているケースです。

 

そして、新築した時点から「雨漏りリスクの高い家」も存在します。同じような環境下にある住宅の中でも、なぜか早く雨漏りが発生してしまう家です。よそのお宅の話なら世間話として聞き流してしまうかもしれませんが、もしそれが我が家だったら?「不思議だね~」で済ませてはいられませんよね。
実は、「雨漏りリスクの高い家」にはこんな特徴があるんです。ご紹介しましょう。

凹凸のある外観

 

総二階のシンプルな家はなんとなく平凡で面白味がない…そんなふうに思われる方も多いのではないでしょうか?あえて凹凸をつけた形状の家は、外壁の塗り分けやタイルの部分使いなどで個性を出しやすく、凝ったイメージがありますね。

 

しかし、ちょっと視点を変えてみましょう。形状が複雑であるということは入隅出隅が多い。すなわち外壁の継ぎ目が多いということです。継ぎ目に使われるシーリング材は、10年もすれば劣化して打ち替えが必要。放置すれば雨水が染み込み始めます。つまり継ぎ目の分だけ、築年数が経過した時の雨漏りリスクが高い…ということになりますね。
凹凸のある素敵な外観の家は、そのことを意識した点検とメンテナンスが必要です。

 

雨漏りを呼び込む屋根

 

屋根の形状は、家のデザインを決める上で大きなポイントです。最近では片流れや陸屋根などのシンプルモダンな形が人気を集めていますね。しかし、格好いいからという理由だけで屋根を選ぶのは非常に危険ですよ。

 

劣化しない屋根は存在しません。しかし同じように劣化が進んだ時に、より雨漏りしやすい形状の屋根があるんです。

 

まず挙げられるのは、スタイリッシュで人気の高い陸屋根。この屋根の問題点のひとつは「軒の少なさ」にあります。せっかくモダンな雰囲気を求めて陸屋根にしている人が、ガッツリと軒を作るケースは皆無ではないでしょうか。

 

軒が小さいとどうなるか?というと、まず窓を開けると雨が直接吹き込んできます。少しの雨でもです。ということは、壁に吹き付ける雨水の量が圧倒的に多くなります。
雨漏りといえば屋根からというイメージですが、実は外壁から染み込んでくるケースが過半数を超えるんですよ。軒の小さな陸屋根は、外壁からの雨漏りリスクが非常に高いのです。

 

さらに、陸屋根は傾斜が無いため雨水がたまりやすく、気づかないうちに屋根がプール状態になっていることもあります。雨漏りについては悪条件であると心しておくのが良いでしょう。

 

次に、複雑な寄棟。わざと屋根に段差をつけたり、谷を設けたりしている屋根です。このような継ぎ目の部分は鋼板で水切りの処理が施されていますが、継ぎ目が多いほどに取り合いの隙間ができやすく、施工不良の発生率も高まります。

 

屋根は日常的に風雨や雪にさらされ、過酷な条件に耐えなければなりません。新築時はよくても、長期的に考えると継ぎ目は少ないに越したことはないのです。複雑であればあるほどマイナスポイントです。ちなみに寄棟は全ての方向に軒があるため、外壁への雨水の吹きつけが少ないというメリットがあります。過剰な凹凸を控えることをオススメします。

 

それならどんな屋根がいいのか?

それはシンプルな切妻屋根。梅雨や台風シーズンのある、雨の多い日本の風土に最も適しています。雨水を素早く受け流し、屋根や外壁にとどまらせません。ありふれていると感じる方もいるかもしれませんが、雨漏り防止にとっては最高の形です。
陸屋根と並んで人気のある片流れも、雨水がスムーズに流れるという点では良いですが、軒が短いと外壁に雨が吹きつけます。この点は注意が必要ですね。

 

軒の無い家、短い家

 

軒の出の短い家や、全く軒の無い家が近年増えています。陸屋根や片流れと組み合わせると非常にスタイリッシュでお洒落。そのデザイン性の高さから人気を集めていますね。確かにとても格好良く仕上がり、場合によってはコストも安くなりますから最高?と思ってしまいそうです。

 

しかし…雨漏り防止の観点から見ると、残念ながらオススメはできません。屋根の形状とも併せて触れましたが、長期的に考えるとデメリットが多すぎるのです。

 

軒が何のために存在しているのかは、ご存知ですか?

 

陽射しや雨風、雪などが外壁に直接当たるのを、かなりの割合で防いでいます。軒のある家に住み慣れていると何とも思わないかもしれませんが、軒の無い家を経験すると、それらの全てがダイレクトに感じられて驚くでしょう。
照りつける直射日光。吹き付ける豪雨や突風の繰り返し。外壁の劣化がどんどん進んでいくのは想像に難くありませんね。継ぎ目のシーリングや、窓枠のコーキングなど雨漏りの原因になりやすい個所も容赦なくさらされます。

 

軒の無い家はある家に比べて寿命が大幅に短いと言われますが、雨漏りの発生率が高いのも大いに関係していると思われます。デザイン性ももちろん大切ですが、長持ちさせたいマイホームにはぜひ軒を!せめて、窓には庇だけでも付けておくことをオススメします。

 

新築時の施工不良

 

シーリングの施工が雑だったり、不適切な防水紙の貼り方で仕上げられた家は、新築や築浅でも雨漏りが生じます。

 

家を建てる際には入念に業者を選び、自らの目で工事をチェックするのがベスト…ですが、建売での購入や、諸事情がそれを許さない状況もあるでしょう。
もし、不幸にして築浅で雨漏りが発生してしまったら?とりあえず様子を見る?いいえ、即刻施工業者に連絡を取って、修理を依頼してください。

 

施工業者は義務として「住宅瑕疵担保責任保険」に入ることを義務付けられています。新築から10年以内に起きた施工不備を原因とするトラブルは、全て無償で補修してもらえますから、費用の心配は不要です。被害を最小限に食い止めるためにも、素早く対処してくださいね。
今回のコラムでは、どんな家が雨漏りしやすいのか?環境要因以外の特徴をまとめてみました。

 

マイホームが雨漏りに対して強いのか弱いのか?客観的にチェックし、弱いと判断した箇所には充分な点検を行う。その意識と行動が雨漏りを遠ざけ、住まいを守ります。
マイホームの新築やメンテナンスを考える時の、ご参考にしていただければ幸いです。