カラーベスト3つの工法

先日、お客様から
「やっぱり・・・うちの屋根は塗装も必要ですか?」
と尋ねられました。

この方は数社から外壁塗装の見積もりを受け「屋根も一緒に施工した方がお得ですよ」と言われたようで塗装をするかどうか悩んでおられました。

確かに、一緒に施工すれば、足場代を節約できてお得になる事もありますが・・
理由が“お得”だけで、屋根塗装が必要だと判断されるには少々、問題があります。

屋根は雨風や紫外線を直接受けるので劣化を避けられませんし、破損すれば雨漏りの原因の1つになる事も確かですが、その工事方法が必ずしも塗装工事とは限りません。

今回はお客様の例をとってカラーベストの屋根工事について正しい知識をお伝えしたいと思います。

 

屋根材のカラーベストって?

 

①カラーベスト屋根材_R

カラーベストとは“平型化粧スレート”の事で屋根材の一種です。セメント、けい砂を原料として、繊維で補強して作られています。カラーベストという名前は、ある建材メーカーのブランド名だったのですが、いまは化粧スレートの代名詞として使われています。

 

自宅の屋根にはアスベストが入ってる?

 

このような屋根材にはアスベストが入っている、として数年前に社会問題化した事をご記憶の方も多いのではないでしょうか。

ご自宅にアスベストが含有する屋根材が使われていたとしても、健康被害には問題はありませんが、知識としては知っておいたほうがいいかもしれません。簡単な見分け方としてはご自宅の図面に書かれている年代と屋根材の名称が以下のものと一致すればアスベストが含有しています。以下はメーカーさんの資料になります。

※図面がない場合などは検査機関にだすと分かるそうですが、特別に理由がないかぎりはそのような事をする必要はないかと思われます。

松下 クボタ

ケイミュー株式会社より抜粋 http://www.kmew.co.jp/kenkai/index.html#title2

 

アスベストの是非はともかくとしてノンアスベストタイプに切り替わった当初は強度のない粗悪品が流通していました。屋根の強度、耐候性だけにかぎって言えばそちらの方が問題があります。

さて、このカラーベストは多くの住宅の屋根材として使われていますが、だからと言って万能な屋根材という訳ではありません。もれなくメリットとデメリットがついてきます。

(メリット)
●耐久性がある
●軽いので耐震対策になる
●デザイン性が良い

(デメリット)
▼メンテナンスが必要
※塗装によって機能が保たれている

 

ここでメンテナンスが必要な事が分かりましたが、塗装によって機能が保たれていくにも限界がありその工事内容に判断をつけなくてはいけません。

 

屋根が出す5つのサイン

 

屋根の塗替え時期としてカラーベストは10年が目安ですよ。と書いてあるのを見たり、言われた事はありませんか?

劣化の速度は、気象環境・屋根の形状、屋根の施工状態で大きく変わるので目安を鵜呑みにするのはお薦めしません。

それでは、何を目安に???と思われるでしょう・・。

答えは“屋根が出すサイン”にあります。安全に屋根に登れる場合は直接。そうでない場合は見積もり時に撮ってもらった写真を頼りに判断してみましょう。

 

①塗装のツヤがなくなっている

星山邸 (43)_R

 

②表層の塗膜がなくなっている。

⑤屋根のサイン3(赤錆)_R

 

③屋根に苔や藻が生えている。

④屋根のサイン3_R

 

④屋根材がひどく剥がれている

993552_968794453176333_8362792643503912254_n_R

 

⑤雨漏りがしている

IMG_9617_R

 

①~③のサインが確認できたら、塗替え時期のサインです。
④や⑤のサインが確認できたら、塗装以外の他の工事が必要になります。

 

もっと大雑把な判断目安を挙げるなら築年数が20年未満なら塗装工事。築年数が20年以上なら、カバー工法か葺き替え工事が一つの基準です。
(築5年でも雨漏りがしていたら塗装工事では直りません。あくまで目安の年数ですのでご了承ください)

それでは、この屋根工事の3つの工法について順番に解説していきましょう。

 

工法その1:塗装工事

 

阪本さん (154)_R 阪本さん (137)_R
施工前 施工後

 

屋根にペンキを塗る工事です。“色あせして、みすぼらしいから塗装する”というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。それはそれで美観を維持するという一つの目的ではありますが、塗装は単に絵の具のように色付だけをするものではなく、最近では塗料そのものに機能があるものを使用しています。何を使用するかにもよりますが、屋根塗装によるメリット・デメリットをあげてみましょう。

 

(メリット)
●屋根の工事の中では最も低コスト(安い)
●屋根材の保護ができる
●美観がよくなる
●遮熱性・断熱性が高まる(種類により)

(デメリット)
▼雨漏り防止の効果としてはうすい
▼雨漏りがしていたら直らない

 

現在の屋根用塗料の主流は遮熱塗料や断熱塗料です。

・遮熱塗料とは?
太陽光を効率よく反射し、屋根表面温度を低減することができます。

・断熱塗料とは?
熱伝導率が低い素材を使用し、熱を伝わりにくくし室内への熱流を抑えます。

作用は違いますが、どちらも目的は同じです。
建物内の温度上昇を抑制し、冷房費の削減につながり節電効果を目的としています。

屋根塗料の代表的なメーカーと商品名をあげてみます。

・株式会社日進産業・・・ガイナ
・日本ペイント株式会社・・サーモアイシリーズ
・エスケー化研株式会社・・クールタイトシリーズ
・日本中央研究所・・アドグリーンコート

 

⑦塗装工事施工前_R ⑧塗装工事施工後_R
施工前 施工後

※ガイナの施工例。遮熱効果を上げるにはどこのメーカーであっても白に近いうすい色を選ぶのがポイントになります。

最近は遮熱・断熱の両方の効果が発揮出来るものが流通しております。当然価格にも反映してきますのでご予算と目的に応じて選択してください。

 

工法その2:カバー工法

 

⑨カバー工法施工前_R ⑩カバー工法施工後_R
施工前 施工後

 

元の屋根を撤去することなく、その上から新しい屋根材を取り付けて覆うのがカバー工法です。屋根を屋根で覆う(カバーする)=屋根を重ねて葺くので“重ね葺き”とも呼ばれます。

キャプチャ

これにもメリットとデメリットがあります。

(メリット)
●既存の屋根材の撤去が無いので費用を抑えられる
●屋根材の撤去が無いので工事期間が短くなる
●屋根材が二重になるので遮音性・断熱性が向上する

※さきほども申しましたが、2004年以前に施工された建物にはアスベストを含んだ建材が多くカラーベストにも例外なくアスベストを含んだものがあります。アスベストを含んだ屋根を解体・処分するには高額な費用が発生しますが、この工法であれば、その費用がかかりません。

(デメリット)
▼この工法が出来ない場合がある既存の屋根が日本瓦、モニエル瓦など)
▼下地の劣化が激しい場合は施工できない。
▼下地の凸凹はそのままでます。
▼軽微ではありますが屋根材が二重になるので重量が増加してしまう

 

カバー工法に用いる代表的な屋根材のメーカーと商品名

・アイジー工業株式会社・・ガルテクト
・ニチハ株式会社・・横暖ルーフ

 

工法その3:葺き替え工事

 

⑪葺き替え工事施工前_R ⑫葺き替え工事施工後_R
施工前

施工後

 

傷んだ屋根材を取り外し、新しい屋根に乗せ替える工法です。

屋根材だけでなく、下地である野地板や防水シートも一緒に取り換えるのが一般的です。屋根が新しくなるので建物の耐久性が向上し、とても良いように思いますが、これにもメリットとデメリットがあります。

 

(メリット)
●建物の寿命が延びます
●軽い屋根材に葺き替えすれば耐震性が向上します

 

(デメリット)
▼屋根材の撤去等がありますので工事期間が長くなります
▼工事の規模が大きくなり費用が高額になります
(屋根材撤去費、人件費、材料費等)

 

屋根工事まとめ

それぞれの工法についてまとめてみます。

工事の種類 塗装工事 カバー工法 葺き替え工事
 

築年数の目安

 

20年以内

 

20年以上

 

20年以上

 

 

メリット

・抵コスト

・屋根材の保護

・美観の向上

・遮熱性・断熱性の向上

・費用を抑えられる

・工事期間が短い

・遮音性・断熱性の向上

・建物の寿命が延びる

・耐震性の向上

 

 

デメリット

・雨漏り防止の効果としてはうすい

・雨漏りは直らない

・既存の屋根、下地によっては出来ない。

・下地の凸凹はそのままでてしまう。

・軽微ではあるが重量が増加してしまう

・工事期間が長い

・費用が高額

 

工事単価目安

 

2500円/㎡~

 

5800円/㎡~

 

7800円/㎡~

 

ベストな選択を

 

屋根1つにとっても工事方法の選択肢があり、使う素材の選択肢がありメリット・デメリット、出来る事、出来ない事があります。見積もりをされた時に、単に目先のお得感だけを工事の判断にされるのではなく、きちんと説明を受け、条件を判断し工事の選択をしてください。