屋根のメンテナンス(工事)は、屋根塗装・カバー工法・葺き替えと3つの工事方法がありますが、どれを選択するかは、お施主のご要望または現在の屋根の状態によります。
しかし、お家の屋根にニチハの屋根材パミールを使用していたら、塗装工事では対応出来ません。
屋根材パミールとは・・住宅建材メーカーであるニチハ株式会社が1996年(平成8年)~2008年(平成20年)の間に販売していた屋根材になります。 |
自宅の屋根材は何を使っているのか?
いきなり、屋根にパミールを使用していたら塗装工事では対応出来ませんと言われても、ご自身の家の屋根材をどんな種類にしたかは記憶にあっても、「うちは◯◯社の◯◯です」と社名や商品名を返答出来る方は少ないと思います。それではどうやって、確認すれば良いのでしょうか?下から見上げても判断は出来ませんが、下記の方法で確認する事が出来ます。
・建築時の設計図を見る
・建築した会社に問い合わせる(資料が残っていれば判明します)
・実際に屋根を見る(業者さんにご依頼ください)
パミールで起こってくる現象
さて、屋根材がパミールだった場合、知っておいて欲しい事があります。パミールは1996年(平成8年)~2008年(平成20年)に製造・販売されたのですが、経年とともに屋根材がミルフィーユのように層間剥離してしまう不具合が発生します。現在は一切販売されていません。
▼屋根材がボロボロになったパミール
傷み具合は様々で、東北、北陸など温暖の差がある地域では傷みが進行しており、大阪など比較的気温が安定している地域では表面劣化程度、もしくは面により劣化となっているように思います。
パミールの場合はカバー工法か葺き替え
分かったところで、何が出来るのか?と聞かれれば、販売から10年以上経つこと、雨漏りなど実害がないかぎりメーカーに無償交換等の交渉はほぼ無理かと思われます。
原因云々や責任の所在に関しては私自身が語る立場ではありませんしメーカーもしくは家を建てたハウスメーカーさんと交渉するのは個々のお施主様が判断することになります。ただ個人的にはあまりそのあたりで労力をかけるのもストレスを抱えることになりますのでどうかな?という思いはあります。私自身がお伝えしたいことはメンテナンスにお気をつけ下さいのみです。
以前から屋根のメンテナンスとして築20年以内のものなら塗装工事。それ以上なら、カバー工法か葺き替え工事を基準にしてくださいとお伝えしてきましたが、パミールの場合は少々違ってきます。
パミールの場合のメンテナンス方法
パミールの場合は経年に関わらず塗装工事が無理でカバー工法か葺き替えのみになります。上記の写真のように傷みが進行していればカバー工法も厳しいです。葺き替えしかありません。
正直に言えば、塗装が出来ない訳ではないのですが塗装の場合あまり意味のない工事といいますか費用の無駄になります。基材(屋根材)自体から剥離がきますのでもちろん保証も出来ません。
放置した場合に起こってくる事
もっとひどく傷みが進行した場合には、屋根材のズレや落下が起こってくる事があります。強風や台風等で屋根材が飛んでしまうと近隣住宅への2次被害を引き起こしてしまいます。不安をあおるつもりはございませんが、家を守る屋根材が周りを攻撃してしまう状況はあってはならない事ですので、ひどく傷んだ場合は早めに対処しておいた方が良いでしょう。
パミールが誕生した背景
家を守るはずの屋根材が不具合を起こしてしまった背景にはアスベストの歴史が深く関係しています。2003年以前に、製造された屋根材にはアスベストが入っていました。今では、発がん性等の健康被害は周知の事実ですが、その問題が発覚するまでは、アスベストは耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の特性があり、安価な事から、工業材料として様々な物に使われてきたのです。
▼厚生労働省パンフレットより石綿写真
アスベストの正体
石綿とも呼ばれる天然の鉱物繊維です。石綿そのものに毒性は無いのですが、繊維がきわめて細いため、浮遊しやすく、吸入されやすい為、飛散した際に吸入してしまうと肺の中に残り、肺がんや中皮腫、アスベスト肺を引き起こしてしまいます。
アスベストの使用規制
健康被害が確認されてから、政府では段階的に使用の規制を行い、最終的に2012年(平成24年)3月いかなる物に対しても全面使用禁止になりました。吹付けは早くに禁止されたものの、耐火性・耐熱性があり資材としては有能だった為、2003年頃までは屋根材や外壁などの建築資材として使われてきたのです。窯業系サイディング・屋根、外壁のスレートなどにも使われてきました。※屋根材などは解体しない限り健康被害は問題ありません。
ノンアスベスト屋根材の誕生
アスベストが段階的に使用禁止になってきた頃に、アスベストを使わない建材の開発が行われ、ノンアスベスト屋根材が誕生しました。その中の1つがニチハ株式会社のパミールという屋根材です。不具合が発生した原因の1つに、アスベストの代用として使われた新素材の耐久性テスト期間が短かった為、起こってきたのでは無いかと巷では囁かれていますが、公式には真相は闇の中にあります。
まとめ
それでは、最後におさらいをしましょう。1996年(平成8年)~2008年(平成20年)に販売された屋根材パミールは屋根材自体の耐久性がないため屋根リフォームのメンテナンス方法として塗装が不可になります。傷みが少ない場合は屋根カバー工法。劣化がすすんでいる場合は葺き替え工事になります。